桐沢洋 クッキングストーリー ボスメシ! 特典ストーリー 特別捜査密着24時 レポ


case:ボスメシ!   

その後の特典ストーリーです!!









レシピを教わりながら完成したカレーもしっかりといただいて、私はすっかり族カレーに

心もお腹も満たされたのだった。けれど・・・・・・・・

この時、私はまだ知らなかった。

桐沢さんの族カレーが警視庁にすごい旋風を巻き起こすことになるなんて・・・・





八千草
『・・・・・あ』
『お腹空いた!』

突然、思い出したように瑛希くんが言いだした。

陽菜
『そういえば私も、お腹空いてきたような・・・・』

天王寺
『いやあお前は四六時中腹空かしとるやろ』

陽菜
『まぁそうなんですけどね』

桐沢
『そうだなぁ なんか食うか?』

花井
『そうですね』

族カレーデートから数週間。

ようやく休めたかと思いきや、やっぱり平和は長いこと続かないらしい。

いつものように事件に追われ、現在は鑑識結果待ちで、結果が出次第、捜査に乗り出さなければならない。

木村さんの話だと、結果は明け方になるとのことだった。

浅野
『・・・・・・・』

浅野さんが無言で出前のメニューの束をセンターテーブルに広げる。

どれどれ、自然にみんなセンターテーブルに集まった。

浅野
『この時間やってない店のは抜いておいた』

陽菜
『ん?あ、もう10時なんだ この時間だと、お店ひとつにまとめた方がいいかもしれませんね』
『どこにします?』

京橋
『私は牛肉の気分です つばき屋の和牛カルビ弁当でいかがです?』

桐沢
『お前はいつも肉だなぁ』

京橋
『ええ』
『私はあらゆる意味で肉食ですので』

陽菜
『・・・・・・・』
『で、瑛希くんは何食べたいのー?』

京橋さんに冷たい視線を送った後、気を取り直して言い出しっぺの瑛希くんに振ってみる。

八千草
『うーん 今迷ってるとこ 何がいいかな』

花井
『ここはピエモンテのナポリピザだろ』

天王寺
『重慶の回鍋肉定食も捨てがたいで』

八千草
『あ、ピジョンのオムライスなんかどうですか?』

浅野
『・・・・・ガレーシャのキーマーカレー』

陽菜
『バラバラもいいとこじゃないですか 桐沢さんは?』

桐沢
『ん?俺はなんでもいーぞ お前は何を食べたいんだ?』

陽菜
『え、私?んーと・・・・・』

ポンと、族カレーが頭に浮かんだ。

(もう一回族カレー食べたいなぁ・・・)
(みんなも桐沢さんの料理すきだから、族カレーにしたら喜びそう)
(・・・って言っても今は無理・・・・・・)
(・・・ん?)
(下の食堂の調理場なら・・・借りられるかも)

料理長の高橋さんとは、異動して間もなく料理の話で盛り上がって以来、結構仲良しだったりする。

(材料は、、時間ならたっぷりあるんだから買ってくればいいだけの話だし)
(いや、でもみんな待てないかな)
(でもでも、一応提案だけしてみる・・・・・?)
(付き合う前に、私がやむを得ず桐沢さん家に一泊したことならみんな知ってるから)
(その時に食べさせてもらったって言えばいいだろうし)
(で、でも、いざ天王寺さんにでも『おい、なんでそんなレアメニュー知ってんねん』とでも突っ込まれたら上手く嘘つける気がしない・・・・・)
(それに、桐沢さんだってこのとこと忙しくて疲れてるだろうし
・・・やめておこう。危ない橋は渡らないに限る。族カレーは食べたいけど・・・)

天王寺
『おう、なんやその百面相』

陽菜
『うわぁっ!!』

突然視界いっぱいに天王寺さんの顏が現れて、私はのけぞった。

天王寺
『お前・・・・・このいい男の顔見て悲鳴て、どういうことやねん』

陽菜
『いい、いえいえ、ちょっと考え事を・・・・』

花井
『どんな考え事をしていればあんな反応になるんだ?』

京橋
『おそらくボスとめくるめく一夜のことを・・・』

陽菜
『んなわけないでしょ!カレーのことですよ、カレーの・・・・』

浅野
『ガレーシャの?』

陽菜
『違います、桐沢さんの・・・・・・』

八千草
『ボスの?』

桐沢
『ん?』

陽菜
『あ・・・・・』

口が滑った。

天王寺
『ボスのカレーてなんや?』

浅野
『・・・食べたい』

花井
『食べたことないぞ』

京橋
『白崎さんの妄想かもしれませんよ』

陽菜
『いや、さすがに妄想じゃありませんって!』

八千草
『えー?てことは、いつ食べたの?』

陽菜
『え、ええっと・・・前にホラ、家が荒らされて桐沢さんの家に泊めてもらった時に、ご馳走になったんだよね ぞ・・・・・・牛すじカレー!』
(・・・・よし、スラスラ言えた!)

桐沢
『え』

陽菜
(・・・・・・・・あ)

桐沢
『そ・・・・そうだ 白崎がのっぴきならない事情で仕方なくウチに泊まった日にたまたま材料があったから作ったんだ』

陽菜
(うわぁぁ・・・・・・)
わざとらしいにもほどがある。

花井
『・・・・・・・・オイ ボスのあの必死な言い訳みたいな言い分はなんだ?』

桐沢
『な・・・・・・・い、言い訳じゃねーぞ!』

天王寺
『実は本命がいてるのに白崎を泊めたんちゃう?』

八千草
『ボスに本命~?あんまり想像つきませんよね』

花井
『いや、女を家に泊めるのが初めてだったから挙動不審になったんじゃ・・・・・・』

天王寺
『まさかやろ。いくら恋愛音痴とはいえ、いい大人やで?女家に泊めたことがないとまではいかへん・・・・・・』

桐沢
『おい、だれが恋愛音痴だ!』

浅野
『・・・・・・・俺も泊めたことないけど』

八千草
『あー、確かに修介さんは泊めないイメージかも』

京橋
『因みに私もありませんよ 女性を自分のテリトリーには入れない主義ですから』

陽菜
『彼女たちが鉢合わせしたら厄介ですもんね!』

京橋
『ええ』

陽菜
『・・・・・・』

八千草
『そ、それで、ボス 牛すじカレー、僕達も食べたいです!』

桐沢
『おー、いつでもいいぞ 今は調理場がないから無理だが・・・・・』

陽菜
『料理長の高橋さんにお願いしてみます!』

気まずい話題からは逃げたいし、族カレーを食べたい。
私は一石二鳥とばかりに、携帯片手に廊下に飛び出した。






車に乗り込むなり、隣から安堵のため息が聞こえる。

桐沢
『ビックリしたなぁ』

陽菜
『・・・・・・・へへ ごめんなさい』

桐沢
『・・・・・』

桐沢さんは面白がるようにほほ笑んで、何も言わずに私の頭をポンポンと優しく叩いた。

結局・・・・・あれからキッチンを借りられることになり、それならばとメニューは族カレーに決定。

言い出しっぺの私が、桐沢さんと一緒に買い出しに行くことになったのだ。

陽菜
『忙しいのに、仕事増やしちゃうのは悪いかなとは思ったんですけど、みんなにも食べさせてあげたくて』

桐沢
『それはいいんだよ でも、あんなもんでいいのか・・・・・?』

陽菜
『あんなもんが食べたいんです!きっとみんなも感激しますよ』

桐沢
『オーバーだなぁ 大したもんじゃねーのに』

陽菜
『大したもんですよ 美味しいもん・・・・・!』

桐沢
『・・・・・ま、じゃー張り切って作るか』

陽菜
『じゃ、私も張り切ってお手伝いしようっと』

桐沢
『ハハ よろしくな、陽菜』

陽菜
『・・・・・・・・』

桐沢
『・・・・・・・・』

ふと目が合って、見つめ合う。

桐沢さんはまるでとびきり綺麗なものでも見ているかのような目で、私を見つめた。

桐沢
『・・・・・・陽菜』

陽菜
『・・・・・はい』

桐沢さんはほんの一瞬、周りを気にするようなそぶりを見せて躊躇ったけれど
思い直したように私の首筋を掴んで、引き寄せた。

当たり前みたいに唇が重なる。

優しいキス。

思わず少しほほ笑んで応えると、桐沢さんは私の頬を包んで、より深く、口づけをした。

こうして抱き合ったのはつい数週間前にことなのに、思ったよりも私はこういう触れ合いを渇望していたらしい。

眩暈のするような熱と切ない痺れが背中を伝い、全身に広がっていく。

陽菜
(桐沢さん・・・・・)

・・・・・・・大好き。

感情が自動的にあふれ出て行くように、私は無意識に桐沢さんの背中へと腕を回して、目いっぱい抱き締めた。






例のごとく、桐沢さんが豪快としか言いようのない適当さで食材をドカドカと選び、必要なものを購入。

大急ぎで警視庁に戻り、地下食堂の厨房を借りて、桐沢さんは手早くカレーを作って。

出来上がるころには、二課のみんなは餌の時間を待つ肉食獣もかくやという有様になっていた。

陽菜
『はい、できましたよー!』

ウオーと歓声が上がる。

みんなは、いただきますと口々に言って、ものすごい勢いでがっつきはじめた。

天王寺
『なんやこれ!メッチャ美味いやん!』

花井
『・・・・・これは美味いな』

浅野
『うん』

八千草
『本当だ!美味しいー!』

京橋
『これはなかなかのものです』

桐沢
『・・・・・・・そうか?ただの牛すじカレーだぞ・・・・・?』

八千草
『ホントに美味しいですって!』

浅野
『おかわりする』

陽菜
『・・・・・へへ』

桐沢さんの族カレー。

自分の料理が褒められているわけでもないのに、妙に誇らしい気分になって来るから不思議だ。

陽菜
『美味しいですよね、族カレー!!』

桐沢
『・・・・・・お、おい』

天王寺
『ホンマやな 毎日でもイケるで』

花井
『それより族カレーってなんだ』

陽菜
『あ』

桐沢
『・・・・・・』

桐沢さんは、数週間前に私にした通りに、いきさつを説明し、数週間前に私がした通りに、突っ込まれる羽目になったのだった・・・・・・・・。






翌朝。

鑑識結果も無事に出て、そこから容疑者を特定することができた。

鑑識結果と状況証拠、聞き込みの結果等を統合して、逮捕状を取って。

私は桐沢さんと一緒に早速犯人逮捕へ向かった。

古めかしいデザインのチャイムを押すと、ピンポーン、と調子っぱずれのチャイムが鳴り響く。

間もなくドアの中から無精髭の男が現れて、


『・・・・・はい』

桐沢
『警視庁特命二課の桐沢だ 山本歩夢はいるか』


『!』

男は目を見開いて、視線をかすかにズラした。

陽菜
『・・・・・・うわっ!』

無精髭の男に突き飛ばされて・・・・咄嗟に桐沢さんが支えてくれる。


『や、山本、逃げろっ!!』

陽菜
『!』

男が怒鳴った方を振り返ると、買い物袋をぶら下げた若い男が、弾かれたように走り出すのが見えた。

陽菜
『桐沢さん、あそこ!』

そう告げて、男を追って走り出そうとして・・・肩を掴まれて制される。

陽菜
『!』

桐沢
『・・・・・・俺が行く』

早口に呟くと、桐沢さんはフェンスをひょいと越えて、山本を追った。

みるみるうちに追いついて、山本の首根っこを掴むと、あっという間に捻り上げていた。

息ひとつ乱すことのない鮮やかな手際に、うっとり・・・・訂正、感心する。

山本歩夢
『・・・・・・くそっ!!』

桐沢
『・・・・・陽菜 大丈夫か?』

陽菜
『へ?・・・・ああ、突き飛ばされたこと?大丈夫に決まってます・・・・それに、転ばないように支えてくれた人が居たし?』

桐沢
『・・・・そうか』

桐沢さんは手錠をかけた山本をパトカーに乗せると、ほほ笑みを消して、無精髭の男を睨みつけた。

桐沢
『・・・・・・おい』

地を這うような声。

刺さりそうな眼光。

陽菜
(うっ この目では睨まれたくない・・・・)


『な、なな、なんだよ・・・・・』

桐沢
『犯人隠避、公務執行妨害、暴行の罪状でしょっぴいてもいいんだぞ』


『・・・・・』

無精髭の男は、みるみる菨んで


『す、すいませんでした・・・・・・』

桐沢
『陽菜、どうする?』

陽菜
『・・・・・・今回は見逃しましょう』

桐沢
『・・・・・だとよ コイツに感謝するんだな』


『は、はい、ありがとうございます・・・・・・』

桐沢
『今回で懲りろよ?』

桐沢さんはイタズラっぽい笑みでそう言うと、『行くぞ』とパトカーに向かった。

陽菜
(最初から逮捕する気なかったくせに)

私はなんだかくすぐったい気分でその後を追った。








陽菜
(ていうか・・・・あの人、こう見えて案外ヘタレなタイプだったりするのかな)

さっきの桐沢さんの対応を見てそう思う。

陽菜
『・・・・・桐沢さんって、かっこいいですよね』

桐沢さんはいつだって、その人のタイプや、かすかに見え隠れする罪悪感を嗅ぎ取って。相手に一番届きやすいやり方で更生を促す。

なかなかできることじゃない。

桐沢
『は?な・・・・・何言ってんだお前?』

陽菜
『アハハ 照れてる』

桐沢
『おお、お前が突然そんなこと言い出すから・・・・・』

陽菜
『桐沢さんだって私に不意打ちに可愛いとか言ってくるじゃないですか!』

桐沢
『あ?それはお前が時々ギョッとするくらい可愛いからで・・・しょうがねーだろ!』

陽菜
『なっ・・・・・・』

思わず赤面する。

陽菜
『なんですかそれ、新しく考えた殺し文句ですか!死にますよ!?』

桐沢
『・・・・なんで弁明しただけなのに殺し文句なんて言われなきゃなんねーんだ・・・・・・』

陽菜
『鈍感・・・・』

桐沢
『誰が鈍感だ そう言うお前もなかなかだろ』

陽菜
『そんなことありませんー!!』

ぎゃあぎゃあ言い合いながら、私達は二課に向かった。



野村
『やっほーおかえり』

桐沢
『・・・・・・なんでお前がここにいるんだ』

野村
『ご挨拶だなぁ』

陽菜
『アハハ・・・・・ん?』

ふと、すぐそこに立っている場違いな服の男性に気付く。

陽菜
『あれっ、高橋さん!』

桐沢
『?誰だ?』

陽菜
『地下食の料理長です 昨日調理場貸してくれた・・・・・』

桐沢
『ああ!課長の桐沢です。昨日はありがとうございました』

高橋料理長
『いえいえ、そんなことより、よろしく頼みますよ!』

桐沢
『?あの何のことでしょうか・・・・・』

野村
『えっとねー、簡単に説明すると~昨日陽菜ちゃんが高橋さんへお礼に置いて行った牛すじカレーを食べて、高橋さんはいたく感激したそうな』

桐沢
『・・・は?』

陽菜
『!』

野村
『で、一度でいいから食堂のメニューとして出したいって言うもんだから、お前が山本逮捕しに行ってる隙に、みんなで企画したんだよね~』

花井 天王寺 浅野 八千草 京橋
『・・・・・・・』

みんながニヤニヤ顔で紙を掲げる。

陽菜
『・・・・・?』

桐沢
『・・・・・?』

『桐沢洋一日料理長企画』
『一日限定!特命二課・桐沢課長の族カレー!』

桐沢
『・・・・・・はっ?』

陽菜
『・・・・・えっ』

野村
『面白そうでしょ?ねっ!』

桐沢
『いや、ねっ、じゃねーだろ!』

野村
『これ、来週の水曜にやるからーどうせお前、代休有り余ってるから問題ないよねっ!よろしくねー』

桐沢
『いや、よろしくね、でもねーよ!』

高橋料理長
『よろしくお願いいたします』

桐沢
『い、いやいや、あの・・・・』

高橋料理長
『何卒!よろしくお願いいたします・・・・・・!!』

桐沢
『・・・・・し、しかし・・・・・・』

陽菜
『・・・・・・』

私達は顔を見合わせて、ただただ立ち尽くしていた。






水曜日の早朝。

桐沢
『・・・・・・』

陽菜
『・・・・・・似合いますね』

桐沢
『・・・・・・』

桐沢さんは海よりも深いため息をついた。

それでも気を取り直したように腕まくりをする。

桐沢
『仕方ねえ・・・・・やるか』

責任感に服を着せたような桐沢さんのことを、成行とはいえ、任されたものは完遂させなければ気が済まないのである。

陽菜
『お手伝いします!』

桐沢
『・・・・悪ィな』

陽菜
『元々は私が族カレーを食べたいなんて言い出したせいだし!・・・・・・ていうか実は、私もみんなに食べてもらいたいから、ワクワクしてたりするんですよ』
『桐沢さんの族カレーはこんなにおいしいんですよって、みんなに言ってまわりたい』

桐沢
『・・・・・・』

陽菜
『桐沢さん?』

桐沢
『・・・・・ったくお前は・・・・・・・・』

ぼそぼそと何かを呟いて・・・・・・・

キョロキョロとまだ誰もいない調理場を見渡すと、桐沢sんはおもむろに私を抱き締めた。

桐沢
『・・・ほとんど凶器だな』

陽菜
『・・・はい?』

桐沢
『すごい殺傷能力だ・・・』

陽菜
『え、肉爆弾とか、そういう・・・』

桐沢
『・・・馬鹿だなぁ』

呆れたように笑って、桐沢さんはもう一度キョロキョロと誰もいない調理場を見渡して・・・

そっと、唇を重ねた。

唇で優しく食むように口付けて、離れていく。

桐沢
『・・・今夜ウチに来いよ』

陽菜
『え、いいんですか?桐沢さんのことだから、代休でも仕事に戻っちゃうかと思ったのに・・』

桐沢
『料理長は・・・残業しねーだろ 俺は今日一日料理長だからな』

陽菜
『・・・・そうですよね!やった!!』

桐沢
『可愛いなぁ、お前』

笑い合って、私達は支度に取り掛かった。





陽菜
『桐沢さん、族カレー4皿お願いします』

桐沢
『了解』

陽菜
『桐沢さん、次、族カレー3皿お願いします』

桐沢
『了解』

一日限定!特命二課・桐沢課長の族カレー!の企画が、食堂の掲示板で告知されてからというもの、噂は瞬く間に警視庁中に広まって。

食券の前売り券はないのかというとんでもない問い合わせまで相次ぐ始末だったから、当初の予定よりかなりの大量の族カレーを作ったものの・・・

昼休みのチャイムとほぼ同時に、一気にこの混雑だ。

陽菜
『次もまた族カレーです 次は・・・・6皿!』

桐沢
『6!?追いつかねーな・・・』

高橋料理長
『族カレーばかりに人が並んでしまって・・・さばききれない上に、行列が他のお客様の邪魔になってますね・・・』


『席に座らせましょう』
『番号札持たせて、出来上がり次第次々僕達が運びますよ』

桐沢
『いやでもな、人手が・・・ん?』

陽菜
『・・・・・・あ・・・・・・』

花井
『人手ならここにあるでしょう』

天王寺
『助っ人参上や!』

浅野
『・・・まかないは族カレーがいい』

八千草
『僕も!』

京橋
『私はそれに美女も添えていただきたいところですが』

陽菜
『大変です!変態がいます!・・・・っていうかみんな、仕事は・・・』

天王寺
『昼休みやで?仕事せんと、好きに使わせて貰うわ』

花井
『当たり前だろ』

陽菜
『え・・・』

いつもは昼休みなんか関係なく捜査してるくせに。

ゴハンを掻っ込んで、すぐまた捜査に戻るくせに。

陽菜
『みんな・・・』

八千草
『絶対てんてこ舞いだろうな~と思ってさ!』

浅野
『うん』

桐沢
『お前ら・・・ありがとな・・・』

陽菜
(さすが・・・二課!!)

京橋
『なにやら青臭い青春ドラマの1シーンのようです』

陽菜
『ハハ、確かに、ちょっとくすぐったいですよね』

京橋
『いえ、気色が悪いです』

陽菜
『・・・そんなこと言って、腰折らないで下さいよ 京橋さんだってしっかりその青臭い青春ドラマの登場人物になってるじゃないですか』

京橋
『・・・まぁ、それもそうですね たまにはいいでしょう・・・青春ドラマも』

陽菜
『ですよね!』

いつもいつも、血なまぐさい事件を追って・・・人の悪意と向き合うことの多いこの稼業。

たまには青春ドラマくらいしなきゃ、やっていられないというものだ。

陽菜
『じゃ、青春ドラマ再開ってことで!』

京橋
『・・・・・』

ちょっと青春ドラマ的ではない笑みを口の端に浮かべて、京橋さんも作業に取り掛かる。

花井さん、天王寺さん、浅野さん、瑛希くん、京橋さん、そして・・・・桐沢さん。

みんなが協力し合いながら慣れない仕事をこなしていく様を眺めながら、私は自分の作業に取り掛かった・・・・・









桐沢
『・・・・ふー』

ほとんどひっくり返るように、桐沢さんはソファに身を沈めた。

私はその隣に腰を下ろす。

陽菜
『今日は一日お疲れ様でした、桐沢さん!』

前評判を裏切らない大好評を得て、無事に一日限定!特命二課・桐沢課長の族カレー!企画は幕を下ろした。

早くも次回はいつかという問い合わせはが料理長のもとに殺到しているらしい。

桐沢
『確かに、今日は捜査より疲れたなぁ』

陽菜
『アハハ、ですよね~』

桐沢
『手伝ってくれてありがとな』

陽菜
『私がやりたかったんですよ、楽しかったです。明日辺り腕が筋肉痛になってるかもしれないけど!』

大きな寸胴のお鍋をひたすらぐるぐるかき混ぜていた、その名残が、すでにこの腕にキている。

桐沢
『ハハ やっぱあんなに大量に作るのは骨だな』

陽菜
『ですよね~』

桐沢
『・・・料理はお前だけに作るくらいがちょうどいいな、量的にも、気持ち的にも』

陽菜
『・・・・二課のみんなは?』

桐沢
『あいつらは別格だろ で、それとは違うところで別格なのが、陽菜ってことだ』

『分かるだろ?』

陽菜
『・・・・うん』

『ヘヘ』

嬉しくなって、桐沢さんの腕に絡まる。

陽菜
『・・・今日の晩ごはんは、私が作りますね』

桐沢
『お』

『そうか?メニューはなんだ?』

陽菜
『桐沢さんの食べたい物作りたい!今何が食べたいですか?』

桐沢
『・・・・・』

陽菜
『・・・・迷ってます?』

桐沢
『・・・・いや、晩飯は・・・・魚料理が食いてーな』

陽菜
『魚かぁ そういえば冷凍庫にタラがありましたよね、あれホイル焼きにしましょうか!』

桐沢
『・・・ああ、頼む でも、実はその前に食いたいもんがあってな』

陽菜
『?サラダなら・・・』

桐沢
『違う』

陽菜
『じゃあ・・・』

桐沢
『・・・・・』

陽菜
『・・・・・』

見つめ合う格好になって・・・

その視線の温度で、桐沢さんのタラの前に食べたい物が何なのか分かった。

陽菜
『・・・・・はい』

頷いて、桐沢さんの頬を包むと、桐沢さんはしめた、という顔でほほ笑んで・・・

私の腰を引き寄せて、そのまま唇を重ねる。

そのまま深く絡み合って、お互いの体に疼きをもたらす。

桐沢
『・・・陽菜』

顔を上げて、桐沢さんは呼吸を整えながら改めて私を見つめた。

陽菜
『・・・・はい』

桐沢
『・・・・・・・』

好きとか、愛してるとか、そんな言葉は言わなかった。

だけど、目は口ほどにものを言うとはよく言ったもので・・・・

桐沢さんの瞳が、言葉以上に私への感情を伝えてくれている。

途方もない大きな愛情と、欲望と、信頼。

胸が柔らかく締め付けられて、嬉しくて、切なくなる。

桐沢さん。

大好き。

・・・私の目も、口ほどにものを言ってくれたらいい。

そう思いながら、私はありったけの心を込め、桐沢さんを見つめ返す。

けれど桐沢さんの顔は、すぐに見えなくなってしまった。

ぼやけるほど近くに桐沢さんを感じながら、私の気持ちはきっともう伝わったと信じて、そっと目を閉じた。





case:ボスメシ! RESOLUTION



特典ストーリーと思って甘く見てたら結構ながかったww

陽菜love

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