それはある日の会社の帰り道
自宅の最寄り駅まで来てﾎﾟｰﾁをﾛｯｶｰに忘れた事に気付いた
（家の鍵もお財布も入ってるのに･･どうしよう）
ここまではﾊﾟｽｹｰｽで来れたから気付かなかった･･
（うーん･･しょうがない会社まで帰ろうか）
と思ったけど･･
残業して最終ぎりぎりの電車に乗ったことを思い出す
（ってか私どんだけ疲れてるんだ･･･ってかなんでこんなバカなんだろ）
自分で自分に突っ込みをいれてため息をつく･･
（はぁ･･･ﾋﾞｼﾞﾈｽﾎﾃﾙ？いやいやお金持ってないし･･）
駅のベンチに座り落ち着いて考えてみる
この時間だし･･頼れるのは一人だけ･･
（でも･･困ったなぁ･･仕事してるかも知れないし）
ベンチに座り考えてから30分･･
（さ、寒いかも･･）
夜中ともなるとかなり冷たい風がふきつける
意を決してその頼れる人に電話をする
数回コールが鳴った時、愛しい人の声がきこえた
『陽菜？こんな時間にどうした？』
『桐沢さん･･･あの、仕事中ですか？』
『あぁ、今休憩中だ』
『そうですか･･仕事中ですよね、あの･･また掛け直します』
『待て、何があった？』
『え？』
『何かあったんだろ？』
『何もないよ？ただ声を聞きたかった･･』
『お前は嘘が下手だな、どうした？話してみろ』
『えっと･･･』
私はお財布と鍵を忘れて困っていることを
正直に桐沢さんに話をした
『お前なぁ･･』
（うぅ･･呆れてるよね･･）
『ごめんなさい』
『なんで早く言わねーんだ？外にいるんだろ？風邪でもひいたらどうするんだ』
『え？だって･･』
『遠慮してるんじゃねーだろーな』
『うっ･･』
『ったく、今どこにいる』
『えっと〇〇駅の前』
『タクシー乗って警視庁の前まで来れるか？』
『でも･･お財布も持ってないから』
『着く頃に前で待ってるから』
『うん･･分かった』
それからタクシーに乗り警視庁の前までやってきた
電話で話していたように桐沢さんが待っていてくれてお金を払ってくれた
『迷惑かけてごめんなさい』
『ったく、迷惑な訳ないだろ？』
そう言って抱き締めてくれた
『寒かっただろ、冷えてるな』
『うん･･桐沢さんしか頼る人いなくて･･』
『そこで温かいコーヒー飲んで少し待ってられるか？』
『うん･･でもお金････』
『ほら、これ持ってけ』
そう言って差し出してくれたのはお財布だった
『え？でも･･･小銭でいいよ』
『いいから持ってろ、すぐ行くから待ってるんだぞ』
『うん、ありがとう』
近くのｺｰﾋｰｼｮｯﾌﾟに入ってﾎｯﾄｺｰﾋｰを飲む
冷えた躰は少しずつ温まり
（桐沢さんのお財布･･･私のこと信頼してくれてるんだな）
そう思って色々考えてたら
躰も心もポカポカになり
桐沢さんが来るまでの時間、鍵とお財布を忘れて落ち込んでいて
寒くてしょうがなかっことなんて
すっかり忘れて･･桐沢さんの事ばかり考えながら
愛しい人の姿を待ち侘びていた
それから桐沢さんの部屋にて
『陽菜、風呂入れ』
『でも桐沢さんだって明日の朝早いんでしょ？先に入って？』
『でもお前、躰冷えてるだろ？』
『でも･･･』
『じゃあ一緒に入るか』
『えぇ！？？？』
『嫌なのか？』
『嫌じゃないけど･･･』
『時間短縮、それに陽菜と入れば疲れもとれるしな』
そう言って笑う桐沢さんの顏はとても色っぽくて
それだけで私の体温は上がってしまう
『ほら、脱がしてやろうか？』
『だ、大丈夫ですよっ･･自分で脱ぎます』
『ハハッ、それは残念』
『も、もう！！』
それから一緒にお風呂に入って
同じベッドに入ったけれど･･
『くそっ』
『ど、どうしたんですか？』
『お前が明日休みなら･･･お前のこと抱きたいと思ってな』
『･･･いいよ？私なら』
『ダメだ、もう遅い時間だしお前の仕事に支障をきたしたら困るだろ』
『ふふっ、桐沢さんありがとう』
『何がだ？』
『色々考えてくれてるんだなと思って･･私、愛されてるんだね』
そう言って桐沢さんの躰にぎゅっとしがみつく
『これ、拷問だな』
『ふふっ、また週末に会えたらね？』
『あ、あぁ･･お前可愛いなぁ』
『照れてる桐沢さんも可愛いですよー』
『お前っ、大人をからかうな』
そんな事を話しながら
桐沢さんの匂いと温もりに安心して
いつの間にか夢の中へと落ちていった･･･
桐沢さん不足だなー･･･
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