それはクリスマスよりも2週間くらい前のある日の週末
久しぶりに桐沢さんの部屋で二人過ごしていて
『桐沢さん?』
『んー?』
夕飯を食べ終わり片付けが終わって桐沢さんに声をかけると
書類に目を通しながら桐沢さんが返事をする
(仕事なのかな・・・?)
『あ、ううん後でいいよ』
『悪い、少しだけ待ってくれるか?』
『うん』
私は雑誌を読みながら桐沢さんの仕事が終わるのを待っていた
『悪いな、せっかく会えたのに』
『年末だもんね、忙しいでしょ?』
『まぁな・・事件は増える一方だしな』
『そうだよね・・』
(クリスマスは会えないだろうな・・・)
『さっき何言いかけたんだ?』
『なんだっけ・・・?忘れちゃった』
(本当はクリスマスの予定を聞きたかったけど・・・無理だよね)
『あー、陽菜』
『なぁに?』
『アレだ』
『アレ!???』
『その・・・』
『?????』
『クリスマス予定あるのか?』
『え?クリスマス・・・』
『いや・・・予定があるなら』
『ないよ!!全然ないっ!!!』
私は桐沢さんの言葉が言い終わらないうちにそう答えていた
『そ、そうか』
『うん・・・ある訳ないよ、桐沢さんと過ごしたいのに』
『お前・・・ほんと可愛いなぁ』
『だって・・・一緒に過ごすのは無理かと思ってたから』
『仕事で遅くなるかも知れないけど俺は陽菜過ごしたい』
『うん・・・嬉しい』
24日のクリスマスにデートをする約束をした
桐沢さんと初めて過ごすクリスマス
その日から24日が待ち遠しくて
プレゼントは何がいいのかとか色々考えて
あっという間に24日がやってきて
桐沢さんの部屋へと行きツリーを用意して
作ってきたケーキを冷蔵庫へ入れ約束の場所へ向かった
街はイルミネーションがすごく綺麗で
道行く人は皆幸せそうで
楽しそうな話し声や笑い声が聞こえる
そんな中私は・・・・・・約束の時間を過ぎたごろもらったメールの画面はそのままに
ただぼんやりとその場所に佇んでいた
忙しかったのか桐沢さんからのメールには
ごめん、遅くなるから部屋で待っててくれ
本当にごめんな
たった2行のメール
刑事という仕事が大変なのは分かってる
約束だってままならいことは十分理解している
だけど・・・今日は普通の恋人同士のように外で待ち合わせをして
デートしたかったな・・・
宝石箱のような街並みから私は一人
静かな暗闇へととぼとぼと歩いていく
桐沢さんの部屋へ戻った私は
小さなクリスマスツリーの電飾を見ながら
いつものソファに座る
ぽろぽろと溢れる涙はいつまでも止まらなかった
桐沢side
仕事を終え自宅へと戻ったのは日付が変わった深夜2時
部屋の鍵を開け中へ入ると、いつものソファにうずくまり眠る陽菜
クリスマスツリーの電飾で照らされた陽菜の頬には涙の痕が残っていた
その涙を指でそっと拭う
泣きながら眠っているのか・・拭っても涙は溢れてくる
俺はただただ胸が締めつけられ
こんなにも可愛い恋人を泣かせてしまっている自分が許せなかった
仕事だからしょうがない、陽菜なら待っていてくれるだろう
知らない間に当たり前のようになっちまっていたのかも知れない
陽菜side
『ん・・・・』
(あれ・・・いつの間にか眠ってしまったのかな・・・)
気が付くと私は桐沢さんの腕の中にいた
『桐沢さん?』
『陽菜・・悪かったな』
『ううん、お仕事でしょ?しょうがないよ気にしないで、ね?』
『泣いてたんだろ?悪い、お前なら待っててくれるんじゃないかと思って甘えてた』
『そんなこと・・・』
『俺はお前を泣かせてばかりだな』
『桐沢さん・・・私なら大丈夫だよ?』
『強がらないでくれ・・本音も言わせてやれねーなんて俺はダメだな・・』
『ダメなんてそんなこと言わないで?イヴに会えなかったのは寂しかったよ・・』
『陽菜・・』
『何回も電話したかった・・今すぐ会いたいって言いたかった・・
でもそれでも私は桐沢さんが好きなの・・
会えない日が続いても、声が聞けなくても、寂しくても、涙が止まらなくても
それでも桐沢さんが・・桐沢さんのことが好きなんだもん・・
桐沢さんじゃなきゃ・・私の隣にいるのは桐沢さんじゃなきゃ駄目なのっ』
私は桐沢さんの首に腕を回して子どものようにわんわんと泣いた
こんなに感情的になって泣いたのは付き合って初めてかも知れない
そんな私を桐沢さんはただぎゅっと抱きしめてくれて
涙が止まるまでただそうやって抱き締め続けてくれた
『ぐすっ・・・っふ、・・』
『大丈夫か?』
『うん・・っご、ごめんなさい』
『謝るな、悪いのは俺なんだから』
『悪くないよ・・誰も悪くない』
『ありがとな・・俺はお前にいつだって助けられてる』
『桐沢さん・・』
『俺にはお前の存在が必要なんだ・・これからの人生もお前と共に歩みたい』
『私も・・私の隣にいるのは桐沢さんしか考えられないよ』
『これからも寂しい思いをさせるかも知れない・・それでもこんな俺を選んでくれるか?』
『もちろん・・・これからも桐沢さんと一緒に歩んでいきたい』
『陽菜・・』
『んっ・・・ふぅ・・・んんっ・・・』
クリスマツツリーの光がチカチカと点滅する部屋の中
お互いの気持ちを確かめ合った二人の熱いクリスマスの夜は始まったばかり・・
MerryXmas
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